雑記2

初めてエレキギターを買ってもらったのは中学3年生の時だった。

今でもよく覚えている。季節は忘れたけれど、何かの折におばあちゃん家に行った時だ。当時、僕はアジアンカンフージェネレーションっていうバンドが凄く好きで、エレキギターが欲しくて欲しくてたまらなかった。あの眼鏡野郎みたいに、轟音だしてやりてえぜ。リライトしてえぜ。っていう感じだった。

デパート売り場の5階にあった楽器屋さんに行って田舎だからそんなに数は多くなかったけどその中から一本、とてもキレイな木目のレス・ポールを買ってもらった。凄く、凄くうれしくて興奮して、自分はなんでもできるって思った。僕もついに彼らの仲間に同じ場所に立った気分だった。

その後、高校に入って友だちとバンドをやったんだけど全然才能とかなくて上手くなれなくてよくギターのせいにしたりした。僕の高校はとても裕福な家庭からくる子達が多かったので、みんないい機材をはじめから持っていてそれのせいなんだろうなって思ってた。そんなことあるわけないのにね。それで高3の時、エイッってどうしようもない中古の少し値の張るギターを買った。まぁまぁよかったんだけど結局全然気に入らないですぐ高校を卒業するときに売ってしまった。それに、もう大学ではギターなんか、バンドなんか、音楽なんか二度とやるもんかって思ってた。僕は本当に下手くそで才能がなくてそれで嫌な思いを沢山したからだ。これはちょっと脇道にそれるけど声を大にしていいたい。音楽なんて。

でも、初めて買ったギターだけはとっておいた。やっぱり僕は人より少し音楽が好きで、人知れず弾いている分には気持ちよかった。それに木目もとっても綺麗だった。安いギターだけど本当に木目は綺麗だった。

大学に入って結局僕は、バンド系サークルに入った。それ以外に特になかったから。

最初は、友達からギターを借りてやっていたんだけどとっても雑に扱われてたそのギターはとてもじゃないけど、使い物にならない場面が多かった。あるとき、たまたまスタジオに入る直前に弦が切れてしまって、あわてて仕方ないから昔使っていたギターをひっぱりだしていった。

弦も錆びているしださいステッカーも貼ってあるし、なにより練習不足だったからボロクソ言われたけどなんだかそれ以来気に入ってしまってまた使うようになった。

久しぶりに、おおよそ2年ぶりくらいにこのギターを使ってライブをした時、それがギターのせいなのかどうかはわからないけど本当に楽しく、心の底から楽しく演奏できたのを覚えている。ちょうど、バンドってやっぱつまんないなーとか少し思っていた(僕は本当に気分屋なのだ)次期だったので凄くモチベーションが上がったのを覚えている。

それで、僕は新しいギターを買うことにした。え、そこはそのギターを使い続けるところじゃないの?と言いたいのはわかるが、なにしろ安いし、ところどころガタがきているのは否めないし、僕は本当に気分屋なのだ。

というわけで僕は新しいギター買い(ちなみにそいつは気に入ってる、特に色が)またこのギターは部屋の隅っこで眠ることとなった。

これが僕と僕の初めてのギターのお話。

それで、明日、このギターを手放すことになった。理由は簡単、売ってくださいっていう人がいたから。そりゃ、部屋の隅で眠っている安物のちょっと木目が綺麗なださいステッカーがはってあるギターが欲しいって言われたら売りますよ。

ちょっと話はそれるけど僕は今、なんの因果か知らないけどベースを弾いていて割と早急にそこそこのベースを買わなければいけなくて、つまり割と早急に金が必要っていう事態であるということもある。あちらの方が申し出た金額は正直、僕の思い出以外なんの取り柄もないギターにしちゃ破格だった。

それで、僕は部屋の片隅(衣装棚と壁の隙間なんてこの世の果てみたいな場所だ)から重いハードケースにはいったギターを取り出した。相変わらず木目がとても綺麗なギターだった。

とても古い友人に公園で再会した時ってきっとこういう気分なんだろうと思いながら手に持ってみると相変わらず重い。安いギターだからな、本当に重かった。いっつも肩こりに悩まされるくらい重かった。でも、そのおかげでバランスがよくて振り回しやすかった。フロントピックアップはならなくなっていた。いつも何かにかけてフロントピックアップは鳴らなくなった。また、ならなくなっていた。ださいステッカーも根気よくへばりついていた。真っ白だったピックガードは茶黄色に煤けていた。いい味がでてるじゃないか。と思った。

それにしても本当に木目が綺麗だった。歳相応に綺麗になっていくなんて素敵な生き方だなと思った。

なんとなくそうやって眺めているうちに無性に弾きたくなってしまってパソコンに繋いで弾いてみた。あの時と違って小さなマーシャルアンプではなくパソコンに繋いで弾くなんて僕も偉くなったもんだなと思いながらチューニングを合わせて適当につまみをいじった。

僕はギターの良い音なんていうのはこれっぽっちもわからないけど、凄く優しい音がした。とても好きだった。理想的だった。そうそう、これこれと言ってしまいそうになるくらいぴったりだった。すごくすごく、愛おしい音がした。

明日、このギターは手放す。でも、妥当な値段で引き渡そう。僕はとても下手だけど、音楽もギターも好きだから、これから僕が出会ってきた様な沢山の素晴らしい音楽的出会いが待っている僕が知らない少年の、そのはじめの一歩を僕が汚してしまうのはフェアじゃないと僕は思ったからだ。

多分、昔の僕と同じくらいの歳のもしかしたらどっかのバンドに憧れて眼鏡をかけた少年か、はたまた、髪を目にかかるくらい伸ばした少年か、そのどちらでもない誰かの手に渡るのだろう。その少年にも沢山の素晴らしい瞬間をこのギターがもたらしてくれることを祈っています。

それにしても本当に綺麗な木目のギターだと僕は思いながら、僕はギターをそっとハードケースにしまった。

Notes

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